千葉雅也 誠実な社交を取り戻す

千葉 雅也 哲学者・作家
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 IT技術が実現した「つながりすぎる」ことがもたらす悩みやストレスは、大きく二つに分けられると思います。

 一つ目はX(旧ツイッター)やインスタグラム、フェイスブック、LINE、YouTubeなど、SNSの普及によるものです。SNSでの評価や感想、人間関係が気になるあまり、多くの人がそれから離れることができず、依存するようになった。

 もう一つは企業や組織でDX化が進み、スマホで常時利用できるスラックなどの報告・連絡・相談ツールが導入されたことによるものです。いつでもどこでも連絡が取れるようになり、即時応答性が求められるようになったため、そのことにストレスを感じる人が増えてきました。

 今回のような特集が組まれたのは、後者によるストレスを軽減するにはどうしたらいいのかを読者が求めていると考えてのことでしょう。

 そこで常時接続と即時応答性を軽減するための方法をここで提言することもできますが、その問題は企業や組織が内部で話し合い、労使双方が納得のいくルールを作っていけば、解決できるはずです。

 そこで、ここではIT技術が私たちから奪ったものが何なのかを見極め、それを取り戻すための方法を考えてみようと思います。

千葉雅也氏 Ⓒ文藝春秋

 SNSが普及し始めたのは、だいたい2010年前後からです。そこから10年ほどは、人間がSNSを使うと、何が起きるのかを実験していたような時期でした。利用者は「いいね」がいくつ得られるかに一喜一憂し、日々ヴァーチャルな空間内での人間関係に思い悩み、心身を擦り減らすことになりました。SNSへの「つながりすぎ」がまさに「問題」だと考えられていた時期です。その時代には接続過剰から適度な距離を取って「孤独」になろう、と提唱することが批評的な意味を持っていました。

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source : 文藝春秋 2025年7月号

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