東京駅丸の内北口徒歩1分にある丸善丸の内本店で「文芸ランキング1位」(2025年4月3~9日)に輝いたのは、『高宮麻綾(まあや)の引継書』(城戸川りょう)。“令和のサラリーマン小説”と話題の本作は、新人作家としては異例の売れ行きを見せている。
丸善丸の内本店の2階売場長、文芸書担当の高頭佐和子さんにその理由を聞いた。
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池井戸潤さんの小説が好きな層に近い
──丸善丸の内本店はどんな書店ですか。
高頭佐和子さん(以下、高頭):丸の内の書店なので、平日の購買層は会社員のお客様が多く、40代、50代の男性がメインです。土日は若い方や家族連れの方も多いですね。
場所柄、ビジネス書や専門書の比重が一般の書店よりかなり高いのですが、近年は文芸書も売上が伸びています。コロナ禍前と比べると、文芸書の占める割合が高くなっています。
──『高宮麻綾の引継書』は、どんな方が購入されていますか。
高頭:木曜日などウィークデイによく売れているので、ビジネスパーソンにしっかり届いていると思います。池井戸潤さんの小説が好きな方と近いのではないでしょうか。
──なぜ丸善丸の内本店で『高宮麻綾の引継書』が売れていると思いますか。
高頭:「こんな会社辞めてやる!」という帯、「引継書」というタイトルが、今の若い人はどんなことを考えているんだろうと気になっている年配のサラリーマンも、「共感して読めそう」と思った若いビジネスパーソン(男女問わず)も、買ってくれているのではないでしょうか。
「城戸川りょう」さんという、男性なのか、女性なのか分からない著者名も良いですね。固定イメージを持たずに読めるのもいいです。読者層が広がりやすいですね。
ランチタイムになると、(表紙の主人公のように)社員証を首から下げたまま買い物に来てくださるお客様がたくさんいらっしゃいます。親近感を持てるというところもあるのではないでしょうか。