少し前のこと、岐阜市のある市議会議員さんからメッセージをいただいた。
「昭和63年に発行された岐阜県のガイドブックを入手し、そこに載っていた本巣市の乙姫滝を見に行こうと思ったのですが、危険だと知り引き返してきました。本巣市の観光係に電話で確認したところ、滝の存在も知らないようでした。もしもご存知であればと思い、DMさせていただきました」
ガイドブックの画像も添付されていた。
“伝説にいろどられた森をハイキング”
“乙姫滝伝説・蛇池伝説”
と、紹介されている。乙姫滝伝説というのが気になったが「戦国時代にまつわる乙姫滝」としか書かれておらず、伝説の内容には触れられていなかった。
市の観光係すら知らない“幻の滝”
私はこのメッセージをもらうまで、乙姫滝の存在そのものを知らなかった。おそらく、岐阜県民でも乙姫滝のことを知る人はほとんどいないだろう。メッセージは「知っていますか?」と尋ねるかたちで書かれていたが、私は「行ったことないんですか?」という挑戦状のようにも感じた。
まず手始めにネットで調べてみると、本巣市のホームページに記載があるのを見つけた。名勝を紹介するページがあり、市指定の名勝が1件のみ存在している。それが、乙姫滝なのだ。そこには、乙姫滝伝説の内容が記されていた。
落差20m程の清々しい滝。戦国時代、斎藤道三に破れた土岐頼芸の軍勢は、ここを通り越前の一乗谷へ逃れたが、その落武者の一族がこの地に住みついた。その一族の娘がこの滝で姿を消し、暫くすると1匹の白い鰻が現れた。ある日照りの年、滝に雨乞いをしたら、白い鰻が現れ、間もなく雨が降り出したので以後乙姫滝と呼ぶようになったという。
戦国時代から伝わる伝説があり、本巣市が指定する唯一の名勝である乙姫滝。かつてはガイドブックのトップを飾っていたにもかかわらず、今となっては市の観光係にさえ知られていない。興味を持った議員さんは危険だからと行くのを断念した滝。これは“伝説の滝”であると同時に“幻の滝”と呼んで差し支えないだろう。
こんな滝が身近にあることを知ってしまうと、気になって仕方がない。すぐにでも行きたい衝動にかられたが、危険を伴う道のりや、周辺が私有地であることを知り、そわそわとした状態が続いていた。