2024年末で、日本全国には1561棟、41万102戸のタワマンが存在する(東京カンテイ調べ)。タワマンは資産価値が高く、大人気の住まいとなっているが、すべてのタワマンに資産価値があって値上がりが続いているわけではない。

 山形県上山市は山形市の南にあって、蔵王連峰を東に見る温泉地として有名な街であるが、ここの田園地帯にタワマンがあることをご存じだろうか。国道13号線上山バイパスを山形市方面に北上すると、左手前方に巨大な建造物が忽然と姿を現す。

最寄り駅から徒歩25分のタワマン

「スカイタワー41」(筆者撮影)

 タワマンの名は「スカイタワー41(よんじゅういち)」。建物が竣工したのは26年前の1999年6月だから昨今のタワマンブームとは一線を画す。事業化した会社は中堅デベロッパー山万の子会社である山万アーバンフロント社だ。総戸数389戸。住戸面積70㎡から105㎡、間取りは2LDKから4LDK。最寄り駅はJR奥羽本線「かみのやま温泉」駅から徒歩25分。当初の販売価格は2000万円台から4000万円台だった。販売は当初から苦戦。販売価格どおりには売れず、半値程度にまで値下げして販売開始6年後の2005年になんとか完売にこぎつけたとされる。

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 山万アーバンフロント社がなぜこの地でタワマンを計画したのかについては謎が多い。第一勧業銀行系の会社で、役員の多くが銀行からの出向者で占められていたが、役員と上山市とに特別なつながりがあったかは定かではない。同社はこのタワマン販売の失敗が尾を引いたのか、業績悪化で2014年1月には破産している。

 実際に現地に出かけてみた。都市部では通勤するために最寄り駅からの徒歩時間が重要だが、駅からは25分は十分にかかる。しかも山形駅にアクセスできる電車は平日朝7時台の2本以外は1時間1本。とても通勤の用はなさない。いっぽう車を使えばバイパス利用で山形市内まで20分程度でアクセスできる。マンション内駐車場は充実していて、すべてが平面駐車場で各住戸に1台以上のスペースが確保されている。実際、住民の多くは山形市内に通勤をする人と高齢者で占められているという。