春は多くの海の生物が産卵を行う季節。なかでもホタルイカの産卵は「身投げ」とも言われ、富山湾の春の風物詩になっている。海岸に無数のホタルイカが打ち上げられ、青白く光る光景は富山湾が創り出した自然の芸術だ。

ホタルイカすくいの様子

 3月下旬にもなると、夜の海岸線にライトと網を持った人々が続々と現れ、波音だけが流れる静かなナイトフェスが開催される。今回は富山県の一大イベント、ホタルイカの身投げに参加し、ホタルイカを獲り、食べ、さらに餌にして魚が釣れるのか? とことん検証して富山の魅力を全力でレポートしていく。

ホタルイカの“身投げ”

 通常、水深200mほどの深海に生息するホタルイカは初春ごろ一斉に表層付近まで浮上し、産卵を行う。産卵後は遊泳力を失ったメスのホタルイカが海岸線まで流れ付き、青白く発光した触腕が折り重なり幻想的な光の波線を描く。

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2本の触腕が青白く光る

 とはいえ、大規模な身投げに遭遇する確率は極めて低いという。

いわゆる爆湧きの様子

 実際にホタルイカの身投げはいつでも行われるわけではなく、大きく分けて4つの条件が揃う必要があるのだ。

(1)3月~5月の間

(2)新月の大潮前後

(3)陸から吹く弱い風(向かい風の強風では確率が低いとされる)

(4)晴れの日(雨水を嫌うとされ前日の天気の影響も受けやすい)

 4つ全て揃うとなると意外とチャンスは少ない。以前ここで紹介したゴカイの産卵(バチ抜け)と同じように、種の生存をかけた産卵は孵化して初めて子孫を残すことができるため、我々人間が思う以上に気候条件にシビアなのだ。

早春はまだ山に雪が残る

 その限られたXデイを予想して、千葉から6時間かけて富山まで車を走らせた。